問4『人生』

人生とは何なのかを問われると、僕は平家物語の冒頭だといつも言う。

 

祗園精舎の鐘の声、
諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、
盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、
唯春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、
偏に風の前の塵に同じ。

 

現代語訳するとこうなる。

 

祇園精舎の鐘の音には、諸行無常、すなわち、この世のすべての現象は絶えず変化していくものだという響きがある。
沙羅双樹の花の色は、どんなに勢いが盛んな者も必ず衰えるものであるという道理をあらわしている。
世に栄え得意になっている者も、その栄えはずっとは続かず、春の夜の夢のようである。
勢い盛んではげしい者も、結局は滅び去り、まるで風に吹き飛ばされる塵と同じようである。

 

時代の篩にかけられても残っているものには本質がある。古典を学ぶ意味はそこにある。